相続において不動産と並んで重要な手続きとなる銀行預金の相続。金融機関ごとに細かな違いはありますが、基本的な流れは共通しています。多数の金融機関での手続き経験をもとに、5つのステップに分けて詳しく解説します。

遺産分割による相続ケース

被相続人：父親のAさん
相続人：配偶者のBさん（母親）、子のCさん・Dさん
遺言書：なし
状況：家族での話し合いの結果、配偶者のBさんが預金を相続することで合意

手続きの流れ

ステップ1：金融機関への届出と初期手続き

被相続人の死亡を金融機関に連絡し、相続手続きを開始します。この際、相続届出書（金融機関により名称は異なります）を受け取ってください。

重要なポイント

• 残高証明書が必要な場合は、この段階で併せて依頼
• 届出後、口座機能は即座に停止されます
• 公共料金の引き落としや年金の受け取りなど、生活に直結する取引がある場合は事前に変更手続きをする

ステップ2：必要書類の準備

相続手続きには以下の書類が必要です

被相続人関連の書類

• 出生から死亡までの連続した戸籍（除籍・改製原戸籍）謄本

相続人全員の書類

• 現在の戸籍謄本（Bさん、Cさん、Dさん）
• 印鑑証明書（Bさん、Cさん、Dさん）

その他

• 預金通帳、定期預金証書
• キャッシュカード
• 貸金庫がある場合はその鍵

ステップ3：相続届出書の記入

相続届出書には以下の内容を正確に記入します

• 被相続人Aさんの基本情報（氏名、住所、口座番号、残高）
• 払い戻しを受けるBさんの振込先口座情報
• 相続人全員（Bさん、Cさん、Dさん）の署名・実印での押印

ステップ4：金融機関への書類提出

記入完了後、すべての必要書類を添付して窓口に提出します。

提出時のコツ

• 他の金融機関でも戸籍等の原本が必要な場合は、窓口でコピーを取ってもらえます
• 書類の量によっては時間がかかる場合があるため、時間に余裕を持って来店
• 事前に電話で来店予約を取ると待ち時間を短縮できる場合があります

ステップ5：手続き完了と入金

書類に不備がなければ、数週間で手続きが完了します。払い戻し金は指定したBさんの口座に振り込まれ、完了通知書が自宅に郵送されます。

 

「銀行預金の相続手続き」豆知識

処理速度の違い
メガバンクや大手地銀は専門の相続センターで一括処理するため比較的スピーディです。一方、小規模な地方銀行や信用金庫では窓口担当者が個別対応するため、やや時間がかかる傾向があります。

簡易手続きの活用
預金額が一定額以下の場合、相続人の一人だけで手続きできる簡易手続きが利用できることがあります。設定金額は金融機関により異なるため、最初の届出時に確認しておきましょう。

まとめ

銀行預金の相続手続きは、事前準備と正確な書類作成がスムーズな完了への鍵となります。複数の金融機関に預金がある場合は、並行して進めることで全体の処理時間を短縮できます。

2025年6月
記事作成
司法書士越智研介