運営:司法書士越智法務事務所〈茨城県つくば市〉
相続手続きにおける「戸籍謄本」について①
相続手続きを進める上で、最初に必要となる重要な書類が「戸籍謄本」です。
戸籍謄本の取得は相続手続きの入り口とも言える作業ですが、戸籍には複数の種類があり、それぞれ異なる役割を持っています。
今回は、相続手続きを円滑に進めるために知っておくべき戸籍の基礎知識について、司法書士の観点から詳しく解説いたします。
戸籍とは何か
戸籍とは、日本国民の身分関係を公に証明する重要な公文書です。本籍地、生年月日、婚姻日、死亡日、両親の氏名、子供の氏名など、その人の人生における重要な出来事が時系列で記録されています。相続手続きにおいては、被相続人(亡くなった方)と相続人との家族関係を証明する根拠資料として不可欠なものです。
戸籍の種類:「謄本」と「抄本」
戸籍を取得する際、「謄本」と「抄本」の2つの選択肢があります。
「謄本」(全部事項証明書)は、その戸籍に記載されている全員の情報を完全に記載したものです。一方、「抄本」(個人事項証明書)は、戸籍に記載されている特定の一人についてのみ記載されたものです。
相続手続きにおいては、被相続人と相続人の関係性を漏れなく証明する必要があるため、基本的に謄本での取得をお勧めしています。抄本で対応できるケースもありますが、後々の手続きで追加取得が必要になることを避けるためにも、最初から謄本で揃えておくのが効率的です。
戸籍の名称による分類
戸籍は、その状態によって以下の3つに分類されます。
1. 現在戸籍
現在も有効で、生きている方が記載されている戸籍です。一般的に「戸籍」と言う場合、この現在戸籍を指すことが多いです。
なお、現在の戸籍謄本については相続手続き以外でも、あらゆる場面で必要になるものですが、つくば市では先進的な取り組みとして「スマート申請」によってスマートフォンで自宅にいながら戸籍謄本などを取得することが可能です。(詳しくはこちら)
2. 除籍
戸籍から人が除かれた状態を指します。これには2つの意味があります。
個人の除籍:結婚、死亡、転籍などにより、その人が戸籍から除かれること
戸籍全体の除籍:戸籍に記載されていた全員が除籍となり、誰もいなくなった戸籍
除籍謄本は、全員が除籍となった戸籍の謄本のことを指します。
3. 改製原戸籍(かいせいげんこせき)
法律の改正により戸籍の様式や記載方法が変更された際の、改製前の古い戸籍のことです。明治時代の戸籍制度開始以来、現在まで4〜5回の大きな改製が行われています。
重要なのは、改製の際に新しい戸籍に移されるのは、その時点で除籍になっていない人のみということです。そのため、古い戸籍で既に除籍となっていた人の情報は、新しい戸籍には引き継がれません。
相続手続きにおける戸籍の重要性
相続手続きでは、被相続人の出生から死亡まで、そして相続人それぞれの現在までの戸籍をすべて収集する必要があります。これは、相続人の漏れがないことを確実に証明するためです。
特に改製原戸籍については、現在の戸籍だけでは確認できない親族関係が記載されている可能性があるため、相続手続きでは必須の書類となることが多いです。
まとめ
戸籍は相続手続きの基盤となるとても重要な書類です。種類も多く、取得方法も複雑ですが、正しい知識を持って準備を進めることで、スムーズな相続手続きが可能になります。
当事務所では、戸籍の収集から相続登記などの相続手続き完了まで、豊富な経験を持つ司法書士が代行いたします。戸籍の取得でお困りの際は、お気軽にご相談ください。
2025年8月
記事作成
司法書士越智研介