運営:司法書士越智法務事務所〈茨城県つくば市〉
相続手続きにおける「戸籍謄本」について③
今回は実際に戸籍を取得する際に必要な「戸籍の読み方」について解説します。
戸籍のどこを見れば作成日がわかる?
以前のコラムでお伝えしたように、相続手続きでは被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍が必要です。そのため、生年月日より前に作成された戸籍まで取得する必要があります。
では、戸籍のどこを見ればその作成日がわかるのでしょうか?
昭和23年を境に戸籍の形式が大きく変わった
実は、戸籍は昭和23年を境に記載方法が大きく変わりました。これは相続制度の変更に伴うものです。
昭和23年以前は家督相続制度でした。次の戸主となる者(主に長男)が単独で相続する制度で、戸籍の記載も戸主を中心に「母」「姉」「弟」等と記載されていました。また、新戸籍の編製理由は主に戸主の死亡・隠居による家督相続や分家であったため、「叔父」「叔母」「甥」「姪」までの記載があることも珍しくありません。
その後、昭和22年の民法改正で家督相続制度が廃止され、昭和23年に戸籍法も改正されました。これにより記載方法が現在のように「一つの夫婦及びこれと氏を同じくする子」という形式に変更されました。
このように制度が大きく異なるため、戸籍取得の際には注意が必要です。
戸籍の作成日の確認方法
年代によって確認箇所が異なります。
昭和23年以前の戸籍
戸主の欄を確認してください。「〜に因り家督相続〇年△月日受附」「〜分家届出○年△月□日受附」という記載があり、その日付が戸籍の作成日となります。
昭和23年以降の戸籍
戸籍の最初のほうに記載されています。「〜につき〇年△月日本戸籍編製」「〜から転籍・・・〇年△月日受附」というように、戸籍が作成された理由とともに日付が書かれており、その日付が作成日です。
重要な注意点:途中から入籍している場合
作成日が生年月日より前であっても、安心してはいけません。被相続人が途中から入籍している場合は、さらに前の戸籍の取得が必要です。
よくあるケース:婚姻による入籍
例えば、被相続人が女性で婚姻により夫の戸籍に入籍した場合です。被相続人の欄に「〇年△月日※※と婚姻により〜番(番地)・・・戸籍より(送付)入籍」という記載があります。
これは、その日付にその戸籍に入籍したという意味です。つまり、その戸籍には入籍日以降の情報しか記載されていません。作成日が生年月日より前でも、出生まで取得できたことにはならないのです。
次に請求する戸籍の見つけ方
上記の記載から、次に請求すべき戸籍がわかります。「〜」の部分には転籍前の本籍地が記載され、「・・・」の部分には転籍前の戸籍の筆頭者(戸主)の名前が記載されています。この本籍地のある役所へ請求することになります。
戸籍・除籍・改製原戸籍の見分け方
戸籍の最後のページの欄外(一番下か左端)を確認してください。「これは、戸籍に記録されている事項の全部を証明した書面である」と記載されていれば戸籍です。一方、「この謄本は〜の原本に相違ないことを証する」と記載されている場合、「〜」の部分に除籍や原戸籍と記載されていますので、その書いてあるものとなります。
戸籍取得の手順まとめ
まず被相続人の住民票の除票を取得して、最後の本籍地を確認します。次に、その本籍地のある役所へ出生までさかのぼって戸籍を請求します。取得した戸籍の作成日を確認し、生年月日より前であれば取得完了です。ただし、作成日が生年月日より後の場合や途中から入籍している場合は、さらに前の戸籍を請求します。この作業を生年月日より前の戸籍を取得するまで繰り返します。
まとめ:戸籍の読み方で押さえるべきポイント
戸籍の取得は、一見単純そうに見えて意外と面倒な作業です。特に兄弟相続や代襲相続の場合は、さらに複雑になります。実際、途中で嫌になったとご依頼いただくケースも少なくありません。
何より大事なことは、戸籍に書かれていることをできるだけ読むことです。用語がわからないなど難しい部分もあると思いますが、なるべく隅々まで目を通してみてください。そうすると、なんとなくでも書かれていることがわかってくるはずです。
2025年12月
記事作成
司法書士越智研介